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【慢性的な痛みは、体の損傷ではなく「脳の警報」だった】痛みの神経科学が変えた、痛みの常識

執筆者の写真: SAKAI KOHKI
SAKAI KOHKI
9月11日
読了時間: 6分

「レントゲンには何も写っていないのに、ずっと痛い」

「手術をして組織は修復されたはずなのに、痛みだけが残っている」


こういった訴えを、施術現場でも何度も聞いてきました。

そしてこれは、決して珍しい話ではありません。


痛みと体の損傷は、必ずしも一致しない。


これは感覚の話ではなく、

神経科学が明らかにした事実です。


慢性的な痛みを抱える方にとって、

この事実を知ることが回復への大きな入口になると、

施術を通じて感じています。


痛みは「体からの入力」ではなく「脳からの出力」だった


痛みについての常識は、この20〜30年で大きく変わりました。


以前は、痛みは「体の損傷が神経を通じて脳に伝わる信号」だと理解されていました。


つまり、

損傷が大きければ痛みも強く、損傷が治れば痛みも消える、という考え方です。


ところが神経科学の研究が進むにつれて、

この図式が成立しないケースが無数に確認されました。


オーストラリア・南オーストラリア大学教授で痛みの神経科学の第一人者である

G. Lorimer Moseley氏は、研究論文の中でこう述べています。

「痛みは体からの入力ではなく、脳からの出力である」


どういうことか。

体に何らかの刺激が加わると、

末梢神経がその信号を脊髄・脳へ送ります。


そして脳は、その信号を受け取った上で

「これは危険か、危険でないか」を判断し、

危険だと判断した場合に「痛み」という警報を出力します。


つまり痛みは、体の状態を「そのまま反映したもの」ではなく、

脳が「危険だ」と判断したときに初めて生じる体験なのです。


なぜ同じケガでも痛みの強さが人によって違うのか


脳の判断は文脈に左右される


この考え方を説明する有名な研究があります。


戦場で負傷した兵士と、同程度の怪我をした一般市民を比較した研究では、

兵士のほうが必要とする鎮痛剤の量が有意に少なかったという報告があります。


これは、兵士にとっての負傷は「戦場からの脱出=安全」を意味するのに対し、

一般市民にとっての同じ怪我は

「日常生活の崩壊」を意味するからではないかと考えられています。


つまり脳は、

同じ組織損傷であっても「これは危険な状況か」という文脈を読んで、

痛みの強さを変えている。


プラセボ効果も、このメカニズムで説明できます。


薬理作用のない偽薬であっても「これは効く」と期待することで実際に痛みが和らぐのは、脳が「危険は去りつつある」と判断して警報を弱めるからです。


理化学研究所の研究(2025年 / 崔翼龍チームリーダーら)では、

プラセボ鎮痛効果に前頭前皮質のミューオピオイド受容体が深く関与していることが明らかにされており、「期待感が痛みを実際に和らげる」という現象の神経生物学的な実態が示されています。


慢性的な痛みのカラクリ——中枢性感作とは何か


脳と脊髄が「痛みに敏感になりすぎる」

急性の痛みと慢性の痛みは、メカニズムが根本的に違います。

痛みの信号が繰り返し送られ続けると、脳と脊髄の神経系が変化します。


具体的には、痛みを伝える神経回路が過剰に活性化した状態が定着し、

以前は痛みにならなかった刺激でも痛みを感じるようになります。

これを「中枢性感作(Central Sensitization)」と呼びます。


中枢性感作は、中枢神経系の過感作状態であり、

有害刺激だけでなく無害な刺激に対しても痛みが生じる状態をもたらします。


慢性腰痛・線維筋痛症・慢性頭痛・むち打ち後遺症など、

多くの慢性疼痛の背景にこのメカニズムがあると考えられています。


組織は治っているのに痛みが続く理由


ここが重要な点です。


中枢性感作が起きると、

体の組織そのものが修復されたあとも、脳と脊髄の「過敏化」が残ります。

だから「検査では異常がないのに痛みが続く」という状態が生じます。


中枢性感作は、

説明のつかない慢性的な筋骨格系の痛みの多くに対して、

エビデンスに基づいた説明を提供します。


これは「気のせい」でも「精神的な問題」でもありません。

神経系に実際に変化が起きているという、身体的な問題です。


急性痛と慢性痛の違いを示す図。左は青で警報→回復→痛み消失、右は赤で痛み信号が続き中枢性感作が起こる】【。

「痛みの説明を受けること」が治療になる

痛みの神経科学教育(PNE)

近年、慢性疼痛の治療において「痛みの神経科学教育(Pain Neuroscience Education:PNE)」という介入が注目されています。


患者さんに痛みのメカニズムを正確に説明することで、

痛みそのものが軽減するという手法です。


軟部組織モビライゼーションと痛みの神経科学教育を組み合わせた群は、

軟部組織モビライゼーション単独群と比較して、痛みの強度・中枢性感作・圧痛・痛みの認知・機能障害のすべてで有意な改善を示しました。


つまり「なぜ痛みが続くのかを理解する」こと自体が、

痛みを変える力を持っているのです。


これは直感に反するように聞こえるかもしれません

。でも考えてみれば理にかなっています。


脳が「この痛みは危険だ・終わらない・自分の体は壊れている」と判断し続ける限り、

警報は鳴り続けます。


逆に「この痛みのメカニズムが分かった・対処できる」と感じると、

脳の危険判断が変わり、警報が弱まる。


施術現場での話をします

慢性的な痛みを長年抱えて来院される方には、ある共通点があります。


「痛みに対する強い恐れ」と「体が壊れているという確信」を持っている方が多い、

ということです(個人の所感です)。


この状態では、いくら体にアプローチしても効果が出にくい。

脳が「危険」と判断し続けているからです。


だから当院では、

施術と並行して「今起きていることの説明」を必ずお伝えするようにしています。


レントゲンに写らなくても痛みが続くのはなぜか。


体が治っているのに痛みが残るのはなぜか。

それは「気のせい」ではなく、神経系に起きている変化だということ。


ノセボ効果という落とし穴

ひとつ、施術者として気をつけていることがあります。


ノセボ効果です。


プラセボ効果とノセボ効果の主要な心理学的決定因子は、

肯定的および否定的な治療期待です。


否定的な期待によって副作用が誘発されたり、

治療効果が消失したりすることがあります。


「あなたの骨はボロボロです」「このままでは歩けなくなりますよ」


——こういった言葉を医療者から言われると、脳はその言葉を「危険信号」として処理します。それが痛みの慢性化を助長することがある。


言葉も、治療の一部だと思っています。


脳の判断で痛みが変わる図。中央に脳、左に緑のプラセボ効果、右に赤のノセボ効果、期待と不安の流れを説明する解説図。

まとめ

慢性的な痛みは「体の損傷の大きさ」とは必ずしも比例しません。


脳が「危険だ」と判断し続ける限り、痛みは続きます。

そしてその判断は、神経系の変化・恐れ・文脈・説明・期待感によって変わります。


体にアプローチする施術は、もちろん重要です。


でもそれと同時に、脳の「危険判断」を変えていくことが、

慢性的な痛みから抜け出すための大きな鍵になると、

神経科学の研究も施術現場も示しています。


長年痛みと付き合ってきた方、検査で異常がないと言われ続けてきた方、

一度この視点から自分の体を見直してみてください。


気になることがあれば、公式LINEからお気軽にどうぞ。


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施術の詳細はホームページをご覧ください。

👉【酒井鍼灸整体院 公式ホームページ】https://www.sakaisinkyuseitaiin.com/

【酒井鍼灸整体院】院長:酒井晃樹住所:大阪府淀川区塚本2-2-23 シャンティー塚本1F(JR塚本駅 徒歩7分)電話:06-6195-7702

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