【膝の痛みは膝だけの問題ではないかもしれない】股関節・足首との関係を研究データから解説

階段の昇り降りで膝の前側が痛む。
長く座ったあとに立ち上がると、膝がうずく。
整形外科で「骨に異常はない」と言われ、
湿布とサポーターで様子を見ているけれど、なかなか変わらない。
こういった相談は、施術の現場でとても多いです。
膝の痛みについて、
研究の世界では「膝そのもの」だけでなく、
股関節や足首の使われ方との関係が長く議論されています。
まだ決着していない部分もありますが、
膝だけを見ていても変わらないとき、視野を広げる手がかりになるはずです。
この記事では、確認できた研究をもとに、わかっていることと、
まだわかっていないことを分けて整理します。

膝の前側の痛み「膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)」とは
膝のお皿(膝蓋骨)のまわりに痛みが出るタイプの膝痛は、「膝蓋大腿疼痛症候群(Patellofemoral Pain Syndrome:PFPS)」と呼ばれます。
次のような場面で痛むのが典型です。
階段の昇り降り
しゃがむ動作
長時間座ったあとの立ち上がり
ランニングやジャンプ
若い世代に多く、特に女性に多いとされています。
画像検査で軟骨のすり減りなど目立った構造の異常が見つからないことも多く、
「異常なし」と言われやすいのも特徴です。
なお、この記事で扱うのは主にこのタイプの膝痛です。
変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯の損傷などは、原因も対応も異なります。
膝が内側に崩れる動き「ダイナミックニーバルガス」
PFPSの研究でよく出てくるのが、
「ダイナミックニーバルガス(動的膝外反)」という動きです。
体重をかけたときに、次のような動きが組み合わさる状態を指します。
太ももの骨(大腿骨)が内側にねじれる
膝が内側に倒れ込む
足首では土踏まずがつぶれ、かかとが外側に倒れる(足部回内)
膝が内側に入ると、膝のお皿が本来の軌道からずれて動き、
お皿の裏側にかかる負担が増えると考えられています。
いわゆる「ニーイン」です。

股関節の筋力と膝の痛み|研究でわかっていること
PFPSの人は股関節の力が弱い傾向がある
2023年に学術誌「Healthcare」に掲載された系統的レビューとメタ分析では、PFPSのある人は、ない人に比べて股関節の外旋筋力と外転筋力が弱いという点について、強いエビデンスがあると結論づけています。
また、ランニングや片脚スクワットの動作中に、
股関節が内側に入り込む動き(股関節内転)が大きくなることも、
中程度のエビデンスとして示されています。
中殿筋の働き方にも違いがある
骨盤を横から支える中殿筋の動きを調べた系統的レビューでは、PFPSのある人は、
階段の昇り降りの際に中殿筋が働き始めるタイミングが遅く、働く時間も短いことが、
中〜強い根拠で報告されています。
さらに同じレビューは、
中殿筋を鍛えるアプローチがPFPSの治療として有効だという根拠は十分にある、
とまとめています。
「原因か、結果か」はまだ決着していない
ここからが大事なところです。
股関節の弱さは、痛みの原因とは限らない
先ほどのメタ分析自身が、前向き研究(先に股関節の筋力を測り、あとから痛みが出る人を追う研究)がないため、股関節の筋力低下が痛みの原因なのか結果なのかは判断が難しいと述べています。
実際に、次のような指摘もあります。
膝に痛みがあるために、殿筋がうまく働かなくなっている(抑制されている)だけではないか、という見方
2つの系統的レビューで、股関節の筋力低下はPFPSを発症するリスク要因ではないとされたこと
股関節の強化とトレーニングで骨盤や股関節の動きは変わったのに、膝の痛みの強さには差が出なかった研究があること
男性のPFPSでは、股関節筋力との関係を示す根拠が女性ほど確認されていないこと
だから「股関節が犯人」と決めつけない
整理すると、こう言えます。
PFPSのある人に、股関節の筋力低下や動きの違いが多く見られるのは確か
股関節への介入が痛みの軽減に役立つという報告もある
ただし、それが痛みの「原因」なのかは、まだ結論が出ていない
当院では、股関節や足首を「原因と決めつける対象」ではなく、
膝の痛みを見るときに必ず評価しておきたい場所として考えています。

足首(足部回内)との関係
膝の痛みを考えるとき、もうひとつ見たいのが足首です。
PFPSに関する総説では、
ダイナミックニーバルガスの原因として、股関節外転筋の弱さに加えて、**後足部の外反(土踏まずがつぶれて、かかとが外に倒れる状態)**が挙げられています。
足部が内側に崩れると、
すねの骨(脛骨)と太ももの骨(大腿骨)の向きが連動して変わり、
膝が内側に入りやすくなる、という考え方です。
以前の記事「骨盤の歪みは足首から起きている」で書いた運動連鎖と同じ発想です。
あくまで「そうなっている人がいる」という段階の話ですが、膝に起きている動きには、上(股関節)と下(足首)の両方から力が加わっていると考えられます。
【上からの連鎖】
股関節外転・外旋筋の働きの低下
↓
大腿骨が内側にねじれる
↓
膝が内側に入る
↓
膝のお皿への負担が増える
【下からの連鎖】
足部回内(土踏まずのつぶれ)
↓
すね・太ももの骨の向きが変わる
↓
膝が内側に入る
↓
膝のお皿への負担が増える
当院でのアプローチ(院長所感)
膝の痛みで来院される方を評価すると、
股関節まわりの筋の働き方や、足首・足部のアライメントに左右差や偏りが見つかることが少なくありません(※個人の感想であり、効果には個人差があります)。
当院では、膝そのものだけでなく、次のような点を確認します。
片脚で立ったとき、しゃがんだときの膝の動き
股関節の可動域と、中殿筋まわりの筋の働き
足首の動きと、距骨のアライメント
体重のかけ方の癖
鍼灸アプローチ
中殿筋や梨状筋など、股関節の外転・外旋に関わる深層の筋肉に対して鍼灸を行い、緊張の緩和と筋の働きやすさの回復を図ります。膝まわりの緊張を直接ゆるめることも行いますが、膝だけで終わらせず、股関節・足部まで含めて組み立てます。
整体アプローチ
足首・距骨の動きの調整と、骨盤・股関節まわりの筋膜の緊張をゆるめる手技を組み合わせます。体重をかけたときに膝が内側に崩れにくい状態を目指します。
医療機関への受診が必要なケース
膝の痛みには、
変形性膝関節症、半月板や靭帯の損傷、関節炎など、多様な原因があります。
次のような場合は、先に整形外科などの受診をおすすめしています。
膝が腫れている、熱を持っている
膝が引っかかって動かない(ロッキング)、急に力が抜ける
安静にしていても痛む、夜間に痛む
転倒やケガのあとから痛みが始まった
急に悪化してきた
自分の膝の動きをチェックしてみる(片脚スクワット)
膝の動きの癖を知る、簡単な方法があります。
壁やテーブルの近くに立ち、手を軽く添えられるようにする
片脚で立つ
ゆっくり膝を軽く曲げて、元に戻す(浅くて構いません)
膝の向きを、鏡やスマートフォンの動画で確認する
膝が内側に倒れて、つま先より内側に入る場合は、股関節や足部の使われ方に偏りがあるかもしれません。左右で差があるかも見てみてください。
これはあくまで目安で、診断ではありません。痛みが強いときは無理に行わないでください。

まとめ
膝の前側の痛み(PFPS)では、股関節の筋力低下や、膝が内側に入る動きが多く見られる
中殿筋を鍛えるアプローチが有効という根拠はある
一方で、股関節の弱さが痛みの原因なのか結果なのかは、まだ決着していない
足首(足部回内)も、膝の動きに関わる可能性がある
だからこそ、膝だけでなく股関節・足首まで含めて評価する価値がある
膝のケアを続けているのに変わらない、整形外科で異常なしと言われた、という方は、膝の周りの動きを一度見直してみてください。
膝の痛みでお困りの方は、まずお気軽にご相談ください。
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